当社の代表商品「五稜箸(ごりょうばし)」。
歴史ある木頭杉の価値を見つめながら試行錯誤を繰り返して完成した商品です。
杉のこと、デザインのこと、ものづくりのこと。これまでの開発秘話や、これからの取り組みなどをお伝えします。







 
 

目 次
 

1.なぜ五角?困難な五角形への挑戦

2.阿波の三分板『 木頭朱杉 』

4.五稜箸ロゴ 〜箸は境界、五に込めた意味と想い〜

5.わんだぁ工房(旧木頭杉割り箸工場)

6.食卓の再生へ
 









 

なぜ五角?困難な五角形への挑戦



箸には丸、四角、六角、八角など様々な形がありますが、三、五、七など奇数の形状は作るのが難しく、
特に五角形は難しいとされています。

その反面、手に持ちやすいのも奇数です。
中でも特に五角形が持ちやすいとされ、箸の正しい持ち方へと促します。
正しく持てば、五角の面が指にピッタリと沿います。

美しい食事作法には、きちんとした箸の持ち方は欠かかせませんね。









少し余談ですが、「五角箸(ごかくばし)」は、
呼び名が似ている「合格箸(ごうかくばし)」とも言われており、とても縁起の良い箸です。










五角形は手に持ちやすい、縁起が良いといった良い面の一方で、実は製造が難しいのです。

箸帯(箸を留める紙)を付けるのも簡単ではありません。

それでもわたしたちは五角形にこだわったのは、大事な理由があるからです。


それは、木頭のある徳島県那賀町が旧五町村で形成されていることです。
「稜」という文字は物の角や山の尾根、稜線を意味します。

森林面積95%の那賀町。この五つの地域を五つの山(稜)に見立て、木頭杉という地域資源をのもと、
共に振興し未来へ歩む姿を五角形に込めています。













 

阿波の三分板『 木頭朱杉 』



五稜箸に使用されている木材は、もちろん木頭杉。中でも赤みと呼ばれる、中心部分(心材)を厳選使用しています。

木頭杉の産地、木頭は、温暖多雨な気候と豊かな土壌に恵まれた地域。
この環境下で、栄養たっぷりにすくすくと成長します。





文献によると、木頭杉は奈良・平安時代から使用され、
鎌倉時代には京都下鴨神社の造営に寄進、天正年間には大阪城築城にも使用されました。

特に板材は加工性に優れ、美しい淡赤色と香り高さが評価され、昭和初期には京阪神市場を席巻、
『阿波の三分板(*1)』とまで呼ばれていました。

このように時代を越え、いま新たに木頭杉が『木頭朱杉(きとうあかすぎ)』として皆様の暮らしを彩ります。



*1
三分板:厚さが三分(約9)?の板のこと。建材等に使いやすい板材として流通した










 









五角形の「五」という漢字をベースに、木頭の風景を織り交ぜて作りました。
右上から左下をなだらかにつなぐ曲線は、過去に木頭杉を流送し現在は那賀町のシンボルとなっている「那賀川」を示しています。

「五」に見られる3つの横線のうち、下の線が「地」で、上の線が「天」です。
地の部分からそびえる三角形の空間は、五稜箸を育む木頭の杉の山。天地をまたぐ形で、鳥の横顔がわかりますか。
この鳥は木頭の未来を担う当社と地域の人材を象徴し、未来へ羽ばたくよう願いを込めました。

また、このロゴにはもう一つの重要な意味を込めました。
「五」の、真ん中の横線は食卓での箸を表しています。
実は、箸には境界の役割があるのをご存知ですか。
箸を境に料理の側が自然の世界で神様の領域。箸の手前が人の世界と言われています。
箸(境界)を取り、神様と繋がって命を頂く行為こそが、神人供食の食事という儀式なのです。
命の尊さや自然への畏敬の念、感謝といった、日本人の美しい精神性をロゴに表しています。





 










わんだぁ工房(旧木頭杉割り箸工場)



五稜箸は木頭和無田(きとうわんだ)の『わんだぁ工房』で作られています。
林業が盛んだった頃、ここは割り箸工場として稼働していました。
しかし林業の衰退とともに閉所され、30年間使用されずそのままになっていました。
わたしたちは木頭杉をブランドとして蘇らせるならここしかないと決め、施設の再生に取りかかりました。





文字通り30年分の埃は凄まじく、我々の行く手を大いに阻みましたが、歴史に埋もれた誇りを取り戻すため、
平成29年に所在地の和無田(わんだ)から名を取り『わんだぁ工房』として新たに生まれ変わりました。



わんだぁ工房では箸製造のほか、様々な木工製品の製造と五稜箸作りのワークショップ(要予約)も行っています。

ご予約はこちらから








五稜箸のロゴの所以となったこの地で、那賀川のせせらぎを聴きながら無心になって箸作りをしてみてはいかがでしょうか。















 

食卓の再生へ



家庭は社会の最小単位の組織であり、子どもが社会に出るための基礎力や人格を養う基盤となるものです。
そしてその基盤となる家庭の団らんを一番とれるのが普段の『食卓』です。

現代社会の多様な価値観のもと、様々な生き方、家庭の在り方がありますが、
いつからか忘れてしまった家庭の温もりを改めて感じたいものです。







五稜箸は一見すると何の変哲もない木の箸ですが、

この箸に秘められた物語をご家庭で味わいながら大切な人との時間を少しでも多く過ごしてくだされば幸いです。